2025/02/06
糖尿病における食べる順番の重要性
糖尿病の食事管理では、「食べる順番」を工夫することで血糖値の急激な上昇を抑えることができます。特に「ベジファースト(野菜から食べる)」という食事法が注目されており、血糖コントロールに有効です。
- 食べる順番の基本ルール
糖尿病の人が血糖値を安定させるためには、以下の順番で食事をすると効果的です。
① 野菜・海藻・きのこ類(食物繊維)
まず、食物繊維が豊富な野菜や海藻、きのこ類を食べます。食物繊維は胃の中で膨らみ、満腹感を与えるだけでなく、糖の吸収を緩やかにする働きがあります。
- おすすめの食品:キャベツ、レタス、ほうれん草、きのこ類、わかめ、もずく
- ポイント:生野菜だけでなく、温野菜やスープにするのも◎
② タンパク質(肉・魚・卵・大豆製品)
次に、肉や魚、豆類などのタンパク質を摂ります。タンパク質は血糖値を直接上げることが少なく、筋肉の維持や代謝の向上にも重要です。
- おすすめの食品:鶏肉、魚、豆腐、納豆、卵
- ポイント:揚げ物は避け、焼き・蒸し・煮る調理法を選ぶ
③ 炭水化物(ご飯・パン・麺類)
最後に、糖質を含む炭水化物を食べます。最初に野菜やタンパク質を食べておくことで、糖の吸収が緩やかになり、血糖値の急上昇を防げます。
- おすすめの食品:玄米、全粒粉パン、そば(低GI食品)
- ポイント:白米よりも食物繊維の多いものを選ぶ
- 食べる順番のメリット
① 血糖値の急上昇を抑える
炭水化物を最後に食べることで、糖の吸収が遅くなり、食後血糖値の急激な上昇を防ぎます。
② 満腹感を得やすい
食物繊維やタンパク質を先に食べることで、食べ過ぎを防ぎ、体重管理にも役立ちます。
③ インスリン分泌の負担を軽減
急激な血糖値の上昇を抑えることで、膵臓への負担が減り、インスリン分泌の効率が向上します。
当院院長の梶山静夫は、糖尿病患者における「食べる順番」の重要性を研究し、特に野菜を最初に摂取することで食後血糖値の上昇を抑制できることを明らかにしました。この食事法は「食べる順番療法」として定着しています。
具体的な研究として、2型糖尿病患者を対象に、野菜を米飯の前に摂取した場合と後に摂取した場合の食後血糖値および血清インスリン値を比較した無作為クロスオーバー試験があります。その結果、野菜を先に摂取すると、30分後の血糖値が有意に低下し、インスリン値も同様に抑制されることが示されました。 (糖尿病患者における食品の摂取順序による 食後血糖上昇抑制効果 繊維 〔糖尿病 53(2):112~115,〕
さらに、持続血糖測定器(CGM)を用いた研究では、食品の摂取順序を変えるだけで、食後の血糖上昇や24時間の血糖変動幅が大きく改善されることが確認されています。 (食べ方と食べる時間が血糖変動に影響を与える夕食は2回に分けて食べると糖尿病やメタボリックシンドロームの発症予防が期待できる Kagaku to Seibutsu 56(7): 483-489 (2018)) katosei.jsbba.or.jp
これらの研究から、食事の際に野菜を最初に摂取し、その後にタンパク質、最後に炭水化物を摂る「食べる順番療法」は、糖尿病患者の血糖管理に効果的であると考えられます。