2025/02/07
2型糖尿病の薬物療法
2型糖尿病は、インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い状態)によって血糖値が高くなる病気です。食事療法や運動療法が基本ですが、それだけでは血糖コントロールが不十分な場合、薬物療法が必要になります。今回は2型糖尿病の薬物療法の種類や特徴、治療方針について解説します。
- 2型糖尿病の薬物療法の目的
2型糖尿病の薬物療法の目的は、以下のとおりです。
- 血糖値を正常範囲に維持する(空腹時血糖・食後血糖・HbA1cの管理)
- インスリンの分泌を助ける・働きを改善する
- 合併症(網膜症・腎症・神経障害など)の予防
- 経口血糖降下薬(2型糖尿病に使用)
経口血糖降下薬は、異なる作用機序を持つ薬剤を組み合わせて使用することが多いです。
① インスリン分泌を促進する薬
インスリン分泌を増やし、血糖値を下げるタイプの薬
- スルホニル尿素(SU)薬(グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリドなど)
- すい臓のβ細胞を刺激し、インスリン分泌を増やす。
- 低血糖のリスクが高いため、慎重に使用する。
- 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)(ナテグリニド、ミチグリニドなど)
- SU薬と同じくインスリン分泌を促すが、作用時間が短い。
- 食直前に服用し、食後高血糖を抑える。
② インスリンの働きを高める薬
インスリン抵抗性を改善し、血糖値を下げるタイプの薬
- ビグアナイド薬(メトホルミン)
- 肝臓での糖新生を抑え、筋肉での糖の利用を促進する。
- 低血糖のリスクが少なく、2型糖尿病の第一選択薬として推奨される。
- 腎機能低下時には使用に注意が必要(乳酸アシドーシスのリスクが上昇するため)。
- チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)
- インスリンの効きを良くし、筋肉や脂肪組織での糖の取り込みを促進。
- 体重増加や浮腫の副作用があり、心不全患者には注意が必要。
③ 糖の吸収・排出を調整する薬
糖の吸収や排出を調整し、血糖値をコントロールするタイプの薬
- α-グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース)
- 小腸での糖の吸収を遅らせ、食後血糖の急上昇を防ぐ。
- 副作用:腹部膨満感やガスが発生することがある。
- SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジンなど)
- 腎臓での糖の再吸収を抑え、尿中に糖を排出することで血糖を下げる。
- 体重減少や血圧低下の効果があるが、脱水や尿路感染症に注意。
④ インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)
消化管ホルモン「インクレチン」の働きを利用して血糖を下げるタイプの薬
- DPP-4阻害薬(シタグリプチン、アログリプチン、ビルダグリプチンなど)
- GLP-1の分解を抑え、インスリン分泌を促進。
- 低血糖のリスクが少なく、使いやすい。
- GLP-1受容体作動薬(リラグルチド、セマグルチド、デュラグルチド)(内服・注射薬)
- インスリン分泌を促し、胃の動きを遅らせることで食後血糖の上昇を防ぐ。
- 体重減少の効果があるが、吐き気や胃腸障害の副作用に注意。
- インスリン療法
2型糖尿病の患者でも、以下の場合にはインスリン療法が必要になることがあります。
- 食事・運動・経口薬で血糖コントロールが不十分である場合
- 膵β細胞が疲弊し、インスリン分泌が著しく低下している場合
- 急性の高血糖状態(糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群)
- 妊娠糖尿病や術前の血糖管理が必要な場合