2025/02/15
ゼップバウンドの日本における適応、特徴、および体重減少効果
- ゼップバウンドの概要と日本における適応
ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド)は、2024年12月に日本で製造販売が承認された週1回投与のGLP-1/GIP受容体作動薬です。主な適応は以下の通りです:
- 肥満症(BMI30以上):特に肥満関連疾患を合併する患者を対象としています。
- 肥満を伴う中等度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA):体重減少による症状改善を目的としています。
現時点では、大学病院や大規模総合病院での処方が中心ですが、今後は肥満専門外来や糖尿病クリニックでも普及が進むと予測されています。
- ゼップバウンドの特徴
ゼップバウンドは、これまでのGLP-1受容体作動薬(例:セマグルチド)に対し、以下の点で大きな特徴を持ちます:
- GIP/GLP-1受容体のデュアルアゴニスト:
ゼップバウンドは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体だけでなく、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体にも作用する二重作動薬です。この「デュアルアゴニスト」作用により、単一のGLP-1作動薬よりも強力な体重減少効果を示します。- GLP-1受容体作動効果:食欲抑制、胃排出遅延、血糖値改善
- GIP受容体作動効果:インスリン分泌補助、脂肪代謝促進、エネルギー消費増加
- 週1回の皮下注射:
長時間作用型であるため、1週間に1回の自己注射で効果が持続します。 - 肥満関連疾患への多面的効果:
体重減少に加え、糖尿病予防、脂肪肝の改善、心血管リスクの低減など多面的な効果が期待されています。
- 臨床試験結果と体重減少効果
ゼップバウンドの体重減少効果は、複数の大規模臨床試験(SURMOUNT試験)で検証されました。
- SURMOUNT-1試験(肥満患者対象):
- 試験期間:72週間(約1年4か月)
- 被験者:BMI30以上の肥満患者およびBMI27以上で肥満関連疾患を有する患者
- 結果:
- 5mg投与群:体重が平均約15%減少
- 10mg投与群:体重が平均約20%減少
- 15mg投与群:体重が平均約22.5%減少
- SURMOUNT-OSA試験(肥満を伴う睡眠時無呼吸症候群患者対象):
- 試験期間:52週間
- 結果:
- 体重減少:平均18%
- 無呼吸低呼吸指数(AHI)の大幅な改善が確認され、睡眠の質が向上しました。
これらの結果から、ゼップバウンドは従来のGLP-1受容体作動薬(例:セマグルチドの約15%減)を上回る強力な体重減少効果を持つことが示されました。
- 日本国内での使用状況と処方の現状
2024年12月の製造販売承認後、日本では以下のような状況が見られます:
- 主な処方施設:大学病院、大規模総合病院などが中心。
- 保険適用:現時点では「肥満関連疾患を有する肥満症」や「OSA合併例」などが保険適用範囲となっており、単なる美容目的での使用は認められていません。
- 安全性と副作用
ゼップバウンドの主な副作用は、GLP-1受容体作動薬と類似していますが、強力な効果に伴い発現頻度がやや高い傾向があります。
- 主な副作用:
- 消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘):初期に多く見られますが、継続することで軽減します。
- 食欲不振:効果の一環ですが、過度な摂食制限には注意が必要です。
- 低血糖:糖尿病治療薬との併用時に発生する可能性があります。
- 重篤な副作用(稀):
- 急性膵炎