2025/02/18
SGLT2阻害薬の血糖低下と体重減少について
SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害薬は、2型糖尿病の治療薬の一種であり、血糖値を低下させると同時に、体重減少効果を持つ薬剤群です。従来の糖尿病治療薬とは異なり、腎臓の働きを利用して糖を排泄するという独自の作用機序を持ちます。
- SGLT2阻害薬の作用機序
SGLT2は、腎臓の近位尿細管に存在し、血液中のブドウ糖を再吸収する役割を担っています。通常、腎臓は1日に約180gのブドウ糖を濾過しますが、SGLT2がこれをほぼ全て再吸収し、血液中に戻します。
SGLT2阻害薬は、この再吸収を抑制し、余分なブドウ糖を尿中に排泄することで、血糖値を低下させます。
主な作用
- 血糖値の低下
- インスリン分泌に依存せずに血糖を下げる
- 低血糖リスクが低い
- 体重減少
- 1日あたり約60~80gの糖を尿中に排泄(240~320kcalのエネルギー喪失)
- 持続的な体重減少が期待できる
- 血圧低下
- 利尿作用により血圧が下がる
- SGLT2阻害薬の血糖低下作用
(1) 血糖値への影響
SGLT2阻害薬は、食後血糖だけでなく、空腹時血糖の両方を低下させます。特に、インスリン抵抗性がある患者や、膵臓のインスリン分泌能力が低下した患者にも有効です。
(2) HbA1c低下効果
- 一般的に、HbA1cを0.5~1.0%程度低下させる
- メトホルミンやDPP-4阻害薬と併用すると、さらに効果が高まる
- 単独療法でも有効だが、他の薬剤との併用が多い
(3) 低血糖リスクが低い
- インスリンを介さない作用機序のため、低血糖を起こしにくい
- ただし、SU薬やインスリンと併用する場合は注意が必要
- SGLT2阻害薬の体重減少効果
(1) 体重減少のメカニズム
SGLT2阻害薬は、尿中に1日60~80gのブドウ糖(240~320kcal)を排泄することで、体重減少を促します。
- 長期的に摂取カロリーが減少するため、体重減少が持続
- インスリンの分泌を抑制することで、脂肪蓄積を防ぐ
- **水分の排出(利尿作用)**による体重減少も一部関与
(2) 体重減少の程度
- 平均2~3kgの体重減少
- 食事・運動療法と併用することで、さらに減量効果が高まる
- BMIが高い患者ほど減量効果が大きい
(3) 他の減量効果を持つ糖尿病薬との比較
薬剤 |
体重への影響 |
SGLT2阻害薬 |
体重減少(2~3kg) |
GLP-1受容体作動薬 |
体重減少(5kg以上の可能性) |
メトホルミン |
軽度の体重減少 |
DPP-4阻害薬 |
体重への影響なし |
インスリン・SU剤 |
体重増加の可能性 |
- SGLT2阻害薬の主な種類
現在、日本で使用されているSGLT2阻害薬は以下の通りです。
一般名 |
商品名 |
ダパグリフロジン |
フォシーガ |
カナグリフロジン |
カナグル |
エンパグリフロジン |
ジャディアンス |
ルセオグリフロジン |
ルセフィ |
イプラグリフロジン |
スーグラ |
トホグリフロジン |
デベルザ |
各薬剤の血糖降下作用や体重減少効果は大きく変わりませんが、腎保護作用や心血管疾患リスク低減効果に差があります。
- SGLT2阻害薬の副作用
(1) 尿路・性器感染症
- 尿中の糖濃度が高くなるため、細菌・真菌感染症のリスク増加
- 膀胱炎・腎盂腎炎・カンジダ感染に注意
- 水分を十分に摂取し、清潔を保つことが重要
(2) 脱水・低血圧
- 利尿作用により、脱水や低血圧のリスクがある
- 高齢者や降圧薬を服用している人は特に注意
(3) ケトアシドーシス(まれ)
- 血糖値がそれほど高くない状態でも糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を引き起こす可能性
- 絶食・過度の運動・過度のアルコール摂取を避ける
- まとめ
(1) SGLT2阻害薬のメリット
- 血糖値を低下させるが、低血糖リスクが少ない
- 体重減少効果がある
- 血圧低下や腎保護作用も期待できる
- 心血管疾患リスクを低下させる(特にエンパグリフロジン、カナグリフロジン)
(2) SGLT2阻害薬のデメリット
- 尿路感染症・性器感染症のリスク
- 脱水・低血圧の可能性
- ケトアシドーシスのリスク(まれ)